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プロフィール

プロフィール

長恒牧場
谷口 綺(たにぐち あや)さん(23)
(たにぐち あや)

出身 / 岡山県岡山市

経歴

高松農業高等学校 卒業
中国四国酪農大学校 卒業
長恒牧場 勤務 (2019年 4月〜)
谷口 綺

※取材日 (2021年12月29日)現在の情報です。

取材にあたって

 このインタビューは当初予定にないものだったのですが、取材にお伺いした長恒牧場で明るく生き生きと働く谷口さんをお見かけしました。加えて牧場主の長恒さんの真摯な人柄に 触れるにつれて、ここで働いておられる従業員さんのお話もぜひ聞いてみたいと思いつき、急遽谷口さんにインタビューさせていただくことになりました。急なお願いにもかかわらず 快く対応してくださった谷口さんとご協力いただきました長恒牧場の皆様に深く御礼申し上げます。

長恒さんの仕事への熱意と人柄に背中を押されて、長恒牧場へ。

今日は急なお願いにもかかわらず取材させていただきありがとうございます。よろしくお願いします。

いえいえ、よろしくお願いします!

ではまず最初に、谷口さんが酪農の仕事に興味を持ったきっかけを教えてください。

私の家はもともと酪農や農業と関わりがある家庭ではないのですが、私のおじいちゃんが動物好きで、幼い頃から家に犬やうさぎ、オウムなど色々な動物を飼っていたこともあって元々動物が好きでした。最初はトリマーなどに興味があったのですが、動物と関われる仕事が良いなと思い、農業高校で大家畜(牛)を専攻して、牛のかわいさを知ったのが最初のきっかけですね。

幼い頃から動物がいるのが自然な環境だったんですね。農業高校に進学するとき、谷口さんのまわりに同じような方向を志しているお友達はいましたか?

一人だけトリマーを目指している同級生がいましたが、思い出せるのはその子くらいですね。でも当時、これは私も大好きな作品なんですけど「銀の匙」という酪農をテーマにしたマンガが流行っていたこともあって、私の通っていた農業高校でも酪農の倍率は高かったです。あとは私の親も「好きなこと、やりたいことをやればいいよ」と背中を押してくれたので進学を決めました。

そこから長恒牧場に就職した経緯を教えていただけますか?

農業高校時代に夏休みのインターンシップで2週間研修させてもらってたのが最初の出会いで、その縁もあって酪農大学校に進学してからもアルバイトをさせてもらったり、研修にも来させてもらいました。そこから私の卒業と同じタイミングで長恒牧場が新しい牛舎を建てて社員を募集することになり、お声かけいただいて今に至ります。

すごく色々なタイミングと縁が重なってこの牧場で働くことになったんですね!就職を決めるときも迷いなくすんなり決められたんですか?

そうですね。やはり研修やアルバイトでお世話になっているときから、ヤスさん(牧場主:長恒泰裕さん)たちの牛に対する熱意みたいなものにすごく惹かれていたんです。・・感じませんか?笑

まだ長恒さんお会いするの2回目ですが、とても感じています。笑

・・ですよね!笑
なので私も、ここで働かせてもらえたらすごく楽しそうだなと前々から思っていました。
今まで長恒牧場はご家族だけで経営されていて、そこに私が一人だけ入って大丈夫かな、という不安も少しはあったのですが、アルバイトをしている当時から「晩ごはん作ってるから一緒に食べようよ」と誘ってくださったり、本当にアットホームに接してくださっていました。
仕事に対する熱意もそうですが、長恒さんたちの人柄が後押しになった部分も大きいです。

牛の生涯すべてに関わらせてもらう「責任」と「やりがい」

とても素敵な関係性ですね。いま若い人たちの中で酪農を担ってくれる人が減少していて、業界的に難しい課題を抱えている部分もあると思いますが、谷口さんの思うこの仕事のやりがいはどんなところですか?

私も含めて、非農家の環境から酪農の仕事に就く人は、「かわいい」というところがスタートになっていることが多いと思います。でも現実には別れもあるし、「かわいい」だけでは済まないことも色々あって、思うようにいかなかったり、つらいことももちろんあります。
でも、この仕事は生まれてから出荷されるまで、牛の生涯すべてを見せてもらえる仕事で、その牛の生涯に関わらせてもらっているという感覚があります。最初から最後まで、というのは他の仕事ではなかなかないじゃないですか?

私もAI(人工授精)をさせてもらってるんですけど、自分が種を付けた牛が生まれて、その牛が死んでいく、その生涯に関わらせてもらうことに責任感とやりがいを両方感じています。

その一方で、正直に言うと私はまだ出荷(=お別れ)のときに「悲しい」という感覚があります。
避けて通れないことではあるんですけど、やっぱり仕事のパートナーでもあるから、まだ複雑な気持ちがありますね・・
牛を出荷するときに、最後にヤスさんが牛をポンポンとたたいて「お疲れさん」って言うんです。その出荷を決めるのも、判断はすべてヤスさんがするので、その重み、というか想いみたいなものを自分で勝手に感じてしまって、私はその言葉を聞いたらもうダメです。

酪農を仕事にする人間として経済動物としての側面もわかっているけど、一緒に過ごしてきた牛への愛着もある、という葛藤があるんですね。

そうですね。それも私が非農家出身だからよりそういう感覚があるのかもしれません。仕事として慣れないといけない部分でもあるんですけどまだ難しくて、できるだけそのシーンを見ないようにしています。

自分の仕事を終えたら、心の中で「ありがとう」と言って、見送るようにしていますね。

将来も、牛に関わる仕事をしていたい

実際働かれていて職場環境についてはどうですか?

ここは牧場自体の設備が新しかったり、酪農大学校が近かったり環境的に恵まれている前提はあると思うのですが、私はとても充実した環境で働かせてもらっていると思います。

月に決められたお休みをきちんといただいて、有給や年末年始・お盆休暇などもきちんといただけています。生き物が相手なのでイレギュラーなことも起きやすい仕事ですが、そこはヤスさんたちがフォローしてくれたり、酪農大学校のアルバイトさんを頼んだり、うまくやり繰りして私がきちんと心身を休められるように、すごく気を遣ってもらっているなと感じます。

あとは酪農ヘルパーさんを頼んでいる日に私が出勤して長恒さんたちが休みをとったり、全体をうまくマネージメントされているなと感じます。・・でもヤスさんは休みの日でも牛舎が気になるみたいで、休みでもちょっと見ておきたいという気持ちがあるみたいですね。

僕たちはそんなにたくさんの牧場を知っているわけではないのですが、今回長恒牧場さんに取材に来させてもらって、色んなところがオートメーションされていたり、ITが入っていたりして、僕たち一般消費者が想像する酪農のイメージとは変わってきている部分があるんだなと感じました。
そのあたりのことは実際に働いている谷口さん世代の視点からはどんな風に見えますか?

その通りだと思います。
機械化やIT化が進んで便利になるのは本当に助かるし、これからもその流れは進んでいくと思うのですが、それでもその機械やソフトを操るのは結局「人」だということは変わらないので、やはり仕事に対して、牛に対して、きちんと向き合っていくことが一番大切なのかなと思います。

将来的にこんなことをやってみたい、例えば自分の牧場を持ってみたい、などイメージしていることはありますか?

自分で牧場を持つようなことはまだイメージできていないですが、もしかしたら酪農家の人と結婚してそのおうちに入るのかな、と想像したりはしますね。酪農は物理的な力が必要な部分もあって、なかなか女性一人では難しい仕事なので・・
でも将来も何かしら牛に関わる仕事をしていたいなと思っています。

最後に、これから酪農の仕事を志している学生さんなどに、先輩として何かアドバイスはありますか?

最後にすごく現実的な話になりますけど(笑)、人工授精や受精卵移植、牽引免許や大型特殊など、資格は学生のうちに取っておいた方が良いと思います。就職してから本当に役に立つので。
あとはどんな仕事もそうだと思いますが、特に酪農は私たちの伝達ミスで牛が死んでしまうようなこともあり得る仕事なので、コミュニケーション能力は大切だと思います。そこは常に心掛けておいた方が良いかな、と感じますね。

あとは、楽しく酪農をしてください!ということですね!笑

取材後記

 長恒牧場で働く谷口さんは第一印象そのままに明るく前向きなフレッシュさとしっかりした考えを併せ持った女性でした。仕事に対して純粋で、長恒さんご家族を心から尊敬し、慕っているのが伝わってきました。それが谷口さんの中で前向きなモチベーションになって好循環を生み、良好な信頼関係を築かれているように感じました。また機会があればさらに成長した谷口さんに、お話の続きを聞いてみたいなと思います。